「熱中症・夏負けを予防する食養生」

 熱中症は、梅雨の合間の突然暑い日や、梅雨明けの蒸し暑い時などに多く見られることから、これからの時期は特に注意が必要です。
 熱中症とは、「高温・高湿度環境下で、体内の水分やナトリウムなどミネラルのバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどして発症する障害」のことで、死に至る可能性のある病気です。
人は普段、暑くなると自律神経の働きで、皮膚の血管に送る血液量を増加させ、大気との温度差を利用して、熱を外へ逃がします。また、汗が蒸発するときに人体から熱を奪う気化熱の働きを利用し、汗をかくことによって熱を体外に放出します。ところが、気温が体温近くに上昇していたり、体に水分や塩分が不足し、汗をかこうにもかけない等の理由から体温が急激に上昇すると、熱中症の症状がおきます。


<熱中症に効く漢方薬>

 熱中症には、解熱作用と自律神経の働きを正常化して体内の調節機能を正常化させる、動物生薬の「牛黄」「人参」製剤の「霊黄参」とそれぞれの症状に対応した漢方薬を組み合わせて服用します。
 熱中症は一般的に、熱けいれん、熱失神、熱疲労、熱射病の4つに分類されます。
熱けいれんは、大量の汗をかき、水だけを補給した場合は、反対に血液の塩分濃度が低下し、その結果、足、腕、腹部などの筋肉に痛みを伴ったけいれんが起こります。
このような時には「霊黄参」と茯苓製剤の漢方薬「苓桂甘草湯」商品名「ノイ・ホスロール」や「経口補水液」を併せて服用します。
 熱疲労は、大量の汗をかき、水分の補給が追いつかないと脱水が起こり、熱疲労の原因となります。熱疲労では、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などの症状がみられます。このような時には、「霊黄参」と「五苓散」や「生脈散」配合の「エナックロイヤル」と「霊黄参」を併せて服用します。
 熱失神は、暑熱環境下では、体温調整のために皮膚の血管が拡張します。この皮膚血管の拡張によって、血圧が低下し、脳への血流が減少して起こるもので、めまい、失神などが見られます。脈が速くて弱くなり、顔面蒼白、呼吸回数の増加、唇のしびれなども見られます。長時間立っていたり、急に立ち上がった時や運動後などにも起こります。
このような時には、「霊黄参」と「理中湯」や麝香製剤の「救心感応丸気」と「霊黄参」を併せて服用します。
 熱射病は、高温環境下で激しい運動を行うと、運動により発生した熱が体表面から放散できず、体温が上昇し、その結果、脳の温度が上昇して体温調整中枢に障害がおよぶと熱射病になります。熱射病は異常な体温の上昇(40℃以上)と様々な程度の意識障害(例えば、応答が鈍い、言動がおかしい、意識がない)が特徴で、頭痛、吐き気、めまいなどの前駆症状やショック状態なども見られます。また、全身臓器の血管がつまった結果、脳、心臓、肺、肝、腎などの全身の臓器障害を併発します。
このような時には、解熱作用のある「霊黄参」と脳の解熱作用のある「羚羊角」や鎮静・鎮痙作用のある「沈香」配合された「能活精」を併せて服用します。
体温が上昇して、血液の温度が上昇した場合は、「霊黄参」と血液の熱を取る「黄連解毒湯」または「三黄瀉心湯」を併せて服用します。
体温の上昇と全身の皮膚温が上昇した場合は、「霊黄参」と皮膚の熱を取る「白虎加人参湯」「竹葉石膏湯」を併せて服用します。
長時間屋外で日光にさらされて紫外線を大量に浴びた場合、体内の免疫生理活性物質の「サイトカイン」が大量に血液中に放出されるので、全身に倦怠感や疲労が起こります。
このような時には、「霊黄参」と免疫バランスを正常化する霊芝菌糸体エキス「紅芝泉」を併せて服用します。
また、お盆を過ぎた頃から、夏の疲れがたまってきて、夏バテや夏負け、胃腸の働きが弱くなってきて、消化不良で下痢をしたり、夏ヤセになったりします。
盛夏を過ぎた頃からの、夏ヤセ、夏バテには、「霊黄参」と「補中益気湯」「清暑益気湯」「理中湯」を組み合わせて服用します。
高齢者で夏やせして身体に熱がこもり体内の水分が枯渇した人は「陰虚」という状態で体液中の水分が減っています。このような状態の人は、身体が火照ったり眠りが浅く夢を見たり、小便が濃縮され、たらりたらり出渋ります。
このような時には「清心蓮子飲」や「六味腎気丸」「知柏腎気丸」などを服用します。
スタミナ料理を食べようとしても、胃腸が弱って消化機能が低下している時には、胆汁製剤の「ワクナガ胃腸薬G・L」と「レオピンファイブ」の組み合わせで服用します。
ビールやジュースなど冷たい飲み物をがぶがぶ飲んでばかりいると、お腹が冷えてきます、特に小腸や大腸が冷えて機能が低下すると、水分を体内に吸収する力が弱くなるので、慢性的な水下痢になります。
このような時には、大腸を温めて水の代謝を良くする、「厚朴」「蒼朮」配合の「ワクナガ生薬胃腸薬」を服用します。
夏風邪をひいた時の風邪薬は症状に応じて使いましょう。市販の総合感冒剤や解熱鎮痛剤を風邪だからと云って安易に使用すると、風邪をこじらせて長引かせてしまう事があります。
漢方の世界でも、夏場の風邪には「麻黄湯」「葛根湯」などの麻黄剤は原則として使いません、もし間違って「麻黄剤」を使って、発汗過多になると、脱汗と云って体内の水分が減り血液中の水分も減り、血液が濃縮されたりして、危険な状態に陥ってしまいます。このため夏の暑邪と湿邪の影響を考慮して処方を選びます。
夏風邪で咳が出て止まらない。このような時には「麻黄細辛附子湯」「サンワロンM」を服用します。
微熱が続いて身体がだるい。このような時には「柴胡桂枝湯」「救心の風邪薬白箱」を服用します。
夏風邪で手足がむくんで、おもだるい。このような時には「防己黄蓍湯」を服用します。
夏風邪で、胃が冷えて頭が痛くて吐いてしまう。このような時には「呉茱萸湯」を服用します。
夏風邪で、お腹が冷えて下痢が続く、このような時には「理中湯」を服用します。
このようにして、症状に応じて処方を選んで治療してゆきます。

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